神戸元町労務管理サポート 社会保険労務士 角森洋子(元労働基準監督官)による就業規則作成、変更支援

就業規則作成・改善相談室

就業規則とその問題点

就業規則は簡単に出来る?

 就業規則は市販されている就業規則セットに必要な数字など書き込んで簡単に作成することが可能です。あるいは、他社の就業規則を流用して作りかえる、モデル就業規則を多少書き換えることでとりあえず形は整います。しかし、その後法律の改正あるいは賃金の変更などに伴い変更を繰り返す間に全体として整合性のないものになりがちです。そもそも当初から、自社の業種や制度にしっかり適合していない上に、条文ごとの辻褄の合わなくなってしまった就業規則は少なくないようです。

ここでは、実際の就業規則の診断によって明らかになった問題のある就業規則規定の、問題点と理由、さらに改善例を示して解説します。

就業規則と問題点  目 次

1 総則、適用範囲
2 採用者の提出書類
3 表現の統一とわかりやすさ
4 労働条件の明示の規定
5 起訴休職
6 休職と退職、解雇
7 退職
8 解雇事由
9 賃金規程、通勤手当と割増賃金
10 セクシュアルハラスメント
11 時間外・休日労働
12 休日:代休と振替休日の違い  
13 二重就業禁止と容認 
14 減給制裁
15 出勤停止
16 解雇、懲戒解雇 

1 総則、適用範囲

  就業規則については全ての労働者に適用されるものを作成する必要があります。しかし、多くの事業場では正社員以外にパートタイム労働者や臨時社員などがおり、正社員とは別の就業規則が定められています。それらの非正社員については就業規則について適用除外としておいて、別に定める規定を適用するとしているのが一般的です。

行政解釈では、このような場合の取り扱いとして、就業規則の本則において別個の就業規則の対象となる従業員に関する適用除外規定か委任規定を設けておくことが望ましいとしています。

解釈例規【一部の労働者に適用される別個の就業規則
同一事業場において、法第3条に反しない限りにおいて、一部の労働者についてのみ適用される別個の就業規則を作成することは差し支えないが、この場合は、就業規則の本則において当該別個の就業規則の適用対象となる労働者に係る適用除外規定又は委任規定を設けることが望ましい。
なお、別個の就業規則を定めた場合は、当該二個以上の就業規則を合したものが法第89条の就業規則となるのであって、それぞれ単独に同条に気鋭する就業規則となるものではない。(昭63.3.14基発150号、平11.3.31基発168号)

 「問題のある規定」でも以下のように契約社員、嘱託、パートタイマー、については別に定めると規定されています。さらに、契約社員、嘱託については「別に定めるほか、この規則を社員に準じて適用する。」と定められています。しかしながら、このような表現では本則のどの部分が契約社員、嘱託に適用されるのか全く不明瞭です。ことあるごとに検討するというのでは労働条件が明らかになっているとはいえません。ことによっては、契約社員や嘱託から予想していない要求が出てこないともかぎりません。規定例1のように「ただし、別規則に定めのない事項は、本規則を適用する。」と適用範囲を明確にしておく必要があるでしょう。

問題のある就業規則規定
(適用範囲)
第○条 この規則は前条に定める社員について適用する。
2 契約社員は、別に定めるほか、この規則を社員に準じて適用する。
3 嘱託は、別に定めるほか、この規則を社員に準じて適用する。
4 パートタイマーについては別に定める。
就業規則規定例

第○条(適用範囲)
この規則は、○○会社の従業員に適用する。
2 パートタイムの従業員及び嘱託その他必要ある者については、別に定めるところによる。ただし、別規則に定めのない事項は、本規則を適用する。


就業規則規定例
(適用範囲)
第○条 この規則は、第○条の定めにより採用された社員に対して適用する。
2 第○条の定めにより、パートタイマーとして採用された社員については、別に定める「パートタイマー就業規則」を適用する。


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2 採用者の提出書類

問題のある就業規則規定
第○条(採用者の提出書類)
社員として採用された者は、指定する日までに次の書類を提出しなければならない。
(1) 身上書及び住民票
(2) その他会社が必要とする書類

 新たに採用された者から提出を求める書類を列挙しています。(1)で住民票が挙げられていますが、これについて提出を求めるのは不適当とされています。住民票記載事項証明書に変更しましょう。

 採用後であれば、本籍についての記載を要求しなければ、住民票でも特段の問題はないと思われます。
なお、住民票記載事項証明書は、住所地の市区町村役場または出張所に備えられている用紙で、氏名、生年月日、現住所等の最低限必要な事項を証明してもらうことができます。また、最低限必要な事項のみの内容であれば、会社が任意に作成した用紙に証明してもらっても差し支えありません。

解釈例規
「就業規則等において、一般的に、採用時、慶弔金等の支給時等に戸籍謄(抄)本、住民票の写し等の提出を求める旨を規定している事例があるが(中略)、これらについても、可能な限り『住民票記載事項の証明書』により処理すること」
「戸籍謄(抄)本及び住民票の写しは、画一的に提出又は提示を求めないようにし、それが必要となった時点(例えば、冠婚葬祭等に際して慶弔金等が支給されるような場合で、その事実の確認を要するとき等)で、その具体的必要性に応じ、本人に対し、その使用目的を十分に説明の上提示を求め、確認後速やかに本人に返却するよう指導すること」(昭50.2.17基発83号、婦発83号、平9.2.21基発105号)

  列挙されている書類が2つしかないのですが、おそらく実際の事務手続きでは他にも提出させる書類があると思います。それらを明記しておけば事務担当者のマニュアルにもなるので記載しておきましょう。
また、 「(2) その他会社が必要とする書類}のように包括的な規定を設けておくと、列挙された書類以外のものの提出を求めることが容易にできます。

 「指定する日」までにと規定されていますが、具体的に定めておいた方が取扱いにばらつきやあいまいさが生じるおそれがないでしょう。社会保険の資格取得は採用してから10日以内、雇用保険の資格取得は翌月10日までと、法律で期限が定められているものもあるので手続は厳格にしなくてはなりません。

通勤経路届について
通勤距離や手段を確認して不正のない通勤手当を計算する。通勤災害が起こったときは、合理的な通勤経路上で起こったものかすぐに確認できる。事故の状況によっては本人から通勤経路を聞くことが難しい場合もあるので入社時にとっておくことが必要です。

下記列挙以外に考えられる書類

・誓約書
誓約書を提出させるときの留意事項
法律で禁止されていることを誓約させてはいけない。
ex.違約金を定める。・・・労働基準法第16条に抵触する。
特定の期間を定めてその間は退職しないことを誓約させる。・・・労働基準法第5条に抵触するおそれがある。

・身元保証書
身元保証に関する法律に基づいて作成されるもの。身元保証契約の期間は最長5年とされている。期間を定めない場合は3年。
・健康診断書
入社日から3ヶ月以内に受診したものに限る。雇入れ時の健康診断を実施する場合は必要ない。

就業規則規定例
第○条(採用時の提出書類)

1 従業員に採用された者は、次の書類を採用日から2週間以内に提出しなければならない。

(1)履歴書
(2)住民記載事項証明書
(3)職歴のある者にあっては、年金手帳及び雇用保険被保険者証

(4)通勤経路届
(5)その他会社が指定するもの

2 前項の提出書類の記載事項に変更が生じたときは、速やかに書面でこれを届出なければならない。

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3 表現の統一とわかりやすさ

問題のある就業規則規定
第○条(妊娠障害休暇)
妊娠による疾病又は異常のため、就業が著しく困難な職員が医師の診断書により休暇を願い出たときは、妊娠障害休暇を認める。

以下略

第○条(通院休暇)
妊娠中及び出産後の女性職員が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるため、休暇を願い出たときは、通院休暇を認める。内訳は次のとおりとする。

以下略

第○条(子の看護休暇)
小学校就学前の子を養育する職員が、病気・けがをした子のために休暇を申し出たときは、年間5日の休暇を与える。

以下略

上記の「問題のある規定例」は同一の就業規則内の規定です。妊娠障害休暇は「職員」が、通院休暇は「女性職員」が、子の看護休暇は「職員」が請求することになっています。これでは、子の看護休暇については、が男性社員も取得できることが不明瞭になってしまっています。子の看護休暇については、今まで努力義務だったものが平成17年4月1日から義務へと変わったものですから、まだ男性も取得できることをよく理解していない社員もいる可能性があります。誰もが読んですぐに理解できるように、これらについては以下のように変更する必要があるでしょう。

第○条(妊娠障害休暇)
・・・・・女性職員が・・・

第○条(子の看護休暇)
・・・・・男女職員が・・・


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4 労働条件の明示の規定

  労働条件が明確にされていない場合、労働条件に関する事業主と労働者の理解のくい違いが生じ、トラブルを引き起こすおそれがあります。そのため、事業主の方には労働者を雇用する際、労働条件(賃金や労働時間など)を明確にし、労働者に対して書面によって明示する義務があります(労働基準法第15条)
  労働者と事業主との確かな信頼関係を築くために、しっかりとした労働契約を結びましょう。


  書面によって明示することが義務付けられている労働条件は以下のとおりです。

  1. 労働契約の期間に関する事項
  2. 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
  3. 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の就業転換に関する事項
  4. 賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期に関する事項
  5. 退職に関する事項 (解雇の事由を含む)
就業規則規定例
第○条(労働条件の明示)
会社は、業員との労働契約の締結に際して、採用時の賃金、就業場所、従事する業務、労働時間、休日、その他の労働条件を明らかにするための労働条件通知書及びこの規則を交付して労働条件を明示するものとする。


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5 起訴休職

問題のある就業規則規定
第○条(休職)
職員が次の各号の一に該当する場合は休職を命ずる。



(5) 刑事事件に関し、起訴されたとき。ただし、情状により休職を命じないことがある。

 起訴休職は、労働者が刑事事件において起訴された場合に会社が休職を命じる制度です。「刑事事件に関し、起訴されたとき。」のように規定して一律休職させるのは好ましくありません。労働者本人が勤務可能な場合は、単に起訴されたという理由だけでなく、出勤することが会社の信用失墜につながるというような可能性があってはじめて、休職を命ずることができるという裁判例があります。

一般的には次の3要件の少なくともひとつが必要とされています。

(1) 企業の対外的信用の失墜する
(2) 企業の対内的な職場秩序の維持に障害が生ずるおそれがある
(3) 不安定な労務提供に対処して企業活動の円滑な遂行に障害が生じるおそれがある

全日本空輸事件
事案の概要
傷害容疑により逮捕・起訴された機長資格操縦士に対する起訴休職処分につき、本件では、原告が引き続き就労することにより、会社の対外的信用、職場秩序に対する障害及び労務の継続的な給付についての障害を生じるおそれはないとして、本件起訴休職処分が無効とされた事例。
判決理由の一部
被告の就業規則37条五号及び39条2項は、従業員が起訴されたときは休職させる場合があり、賃金はその都度決定する旨を定めている。このような起訴休職制度の趣旨は、刑事事件で起訴された従業員をそのまま就業させると、職務内容又は公訴事実の内容によっては、職場秩序が乱されたり、企業の社会的信用が害され、また、当該従業員の労務の継続的な給付や企業活動の円滑な遂行に障害が生ずることを避けることにあると認められる。したがって、従業員が起訴された事実のみで、形式的に起訴休職の規定の適用が認められるものではなく、職務の性質、公訴事実の内容、身柄拘束の有無など諸般の事情に照らし、起訴された従業員が引き続き就労することにより、被告の対外的信用が失墜し、又は職場秩序の維持に障害が生ずるおそれがあるか、あるいは当該従業員の労務の継続的な給付や企業活動の円滑な遂行に障害が生ずるおそれがある場合でなければならず、また、休職によって被る従業員の不利益の程度が、起訴の対象となった事実が確定的に認められた場合に行われる可能性のある懲戒処分の内容と比較して明らかに均衡を欠く場合ではないことを要するというべきである
労働基準法89条9号
休職 / 起訴休職 / 休職制度の合理性
休職 / 起訴休職 / 休職制度の効力
1999年02月15日東京地 判決 平成9年 (ワ) 16844一部認容、一部棄却(確定) 労働判例760号46頁/労経速報1708号3頁::

 中小企業の場合、休職規定に起訴休職を具体的に規定している例、モデルはほとんど見られません。下記規定例の1、2)の特別の事情に該当することになります。実際の取り扱いは「起訴即休職」ということにならないように配慮する必要があります。

就業規則規定例
第○条 従業員が、次の場合に該当するときは、所定の期間休職とする。
1)

私傷病による欠勤が○か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないと認められたとき

○年
2)

前号のほか、特別の事情があり休職させることが適当と認められるとき

必要な期間

休職期間中に休職事由が消滅したときは、元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難であるか、又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治ゆせず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

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6 休職と退職、解雇

就業規則規定例 1

第○条(休職)
社員が次の各号の一に該当するときは、休職を命ずる。
(1) 業務外の傷病による欠勤が引き続き3ヶ月を超えたとき。

以下略


第○条(復職)
休職期間中に休職事由が消滅したときは、元の職務に復職させる。なお、元の職務に復職させることが困難であるか、又は不適当な場合には、異なる職務に就かせることがある。

2 略

第○条(解雇)
社員が、次の各号の一に該当するときは解雇する。

(4) 第○条に定める休職期間が満了し、休職事由が消滅しないとき。

 

就業規則規定例2
(休職)

第9条 
1 従業員が、次の場合に該当するときは、所定の期間休職とする。 
@ 私傷病による欠勤が○カ月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないと認められ     たとき     ○年以内

A 前号のほか、特別の事情があり休職させることが適当と認められるとき         必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させるこ  とが困難であるか、又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治ゆせず就業が困難な場合は、休職 期間の満了をもって退職とする。

 労働者が私傷病(業務外)により就労できない場合、
民法の契約原則では、労働契約の目的を達成できず契約を継続しがたいものとして、使用者は、契約解除ができます(普通解雇)。

 しかし、終身雇用を前提にしてきたわが国の企業では、病気休職制度を設けることが一般的です。休職制度は、法律上の制度ではなく、就業規則や労働協約によって認められた制度です。

 これは、所定の休職期間内に復職できれば解雇を猶予するが、休職期間満了までに復職できなければ解雇あるいは自動的に労働契約が終了するという制度です。

一般に休職期間中は健康保険の傷病手当金(標準報酬月額の6割・1年6か月)や共済組合から給付金が支給されています。

簡単に解雇することはできない

 休職期間終了後に元の職場に復帰する権利は、当然に認められているわけではありません。医師の診断により労働者の状況(身体の障害の程度等)が、業務にたえられるかどうか、元の職場に復帰することや配置転換をするの可能性があるかどうかは会社が判断するものです。
元の職場に復帰することや配置転換をするの可能性があるにもかかわらず、それを無視し解雇した場合は、その解雇は無効になります。
休職期間満了後の解雇も基本的には同様です。 

 従来の労務を十分に遂行することができない場合でも、提供可能な労務分野があり、かつその提供を申し出ており、配属部署でのやりくりができる場合は、使用者は労働者の就労を認めなければらないとされています(片山組事件 東京高裁 平成7.3.16、最高裁第一小法廷 平成10.4.9 労判736号15ページ、差戻審 東京高裁 平成11.4.27、差戻審上告審 最高裁 平成12.6.27)。

一旦復職させて後に解雇するというケースでも、同様です。(全日本空輸事件 大阪高判平成13.3.14 労判809号61ページ)

現在のモデル就業規則等を見ますと規定例2が一般的なようです。規定例2の方が実務上は扱いがしやすいように思われます。

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7 退職

  労働者の意思による退職には、自己退職合意退職があります。どちらの場合も、退職の意思表示をするには、必ずしも書面による必要はありませんが、書面によるのが普通です。

自己退職の場合は、退職の意思表示が使用者に到達すれば、一定期間(下記民法参照)が経過することで退職の効果が生じます。使用者の同意や承諾は必要ありません。この場合、退職届を撤回することはできません。
雇用期間の定めのない場合は、退職申し入れをしてから2週間で退職ということになります。その2週間は、出勤して業務の引き継ぎなどをすることになります。一方、雇用期間の定めのある場合は、期間の途中で退職することは原則としてできません。ただし、就業規則などでこれとは別の取り決めをすれば、そちらが優先します。

民法627条

当事者が雇傭の期間を定めざりしときは各当事者は何時にても解約の申入 を為すことを得此場合に於ては雇傭は解約申入の後2週間を経過したる 因りて終了す 

2 期間を以て報酬を定めたる場合に於ては解約の申入は次期以後に対して之を為すことを得但其申入は当期の前半に於て之を為すことを要す

3 6か月以上の期間を以て報酬を定めたる場合に於ては前項の申入は3か月前に之を為すことを要す

 合意退職の場合は、退職の意思表示によって労働者が合意解約を申込み、使用者の受理があってはじめて退職の効果が生じます。これは、退職届を提出することで合意解約を申込み、使用者が受理(同意・承諾)することで退職の効果が生じます。使用者による受理が未だないという状態(上司に提出したが、上司が保管している場合など)は、合意解約の申込みがなされただけですので、退職の効果は生じません。この段階では、撤回も可能です。
なお、使用者の受理(同意・承諾)は、通常、退職辞令の交付により行われます。

問題のある就業規則規定
(依願退職)
第○○条 職員が退職しようとする場合は、少なくとも14日前まで退職願を提出し、任命権者の承認を得なければならない。


この例では、合意退職と自己退職の区別がついていないということになります。そこで次にモデル規定を示します。

就業規則規定例
第○○条(退職)
1 前条に定めるもののほか従業員がつぎのいずれかに該当するときは、退職とする。

(1) 退職を願い出て会社から承認されたとき、又は退職願を提出して○日を経過したとき

  この場合は「退職を願い出て会社から承認されたとき」が合意退職であり、「退職願を提出して14日を経過したとき」が自己退職ということになります。後半の自己退職については承認は必要ないということが表現されています。

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8 解雇事由

 解雇の事由は労働基準法第89条により就業規則の絶対的必要記載事項になっています。平成15年の労基法改正により、絶対的必要記載事項「退職に関する事項」に「解雇の事由を含む」と明記されました。
そこで下記「問題のある規定例」にもみられるように解雇事由について列挙する必要があります。現在のところ就業規則に記載された解雇事由は限定列挙といって、定められた解雇事由でしか解雇できないとされていますので、規定内容については慎重に検討し、さらに最後に「その他前各号に準ずるやむを得ない事情があったとき」のように一般条項を記載しておく必要があります。この規定をおくことによって限定的に列挙された解雇事由に相当するような事実についても解雇で対応することができることになります。

「問題のある事例」については(3)が一般条項にあたると考えられますが、1,2号の解雇事由に準ずるとしか書かれていませんので、一般条項としては極めて不十分です。せっかく一般条項を置くのですから、やはり各号の最後において、列挙された具体的な解雇事由を全て受けて「その他前各号に準する」としたほうが安全であると言えるでしょう。

実は解雇事由としては、下記に示すようにこれら以外に別の規定(解雇制限)の中でも「療養開始後3年を経過して傷病が治らないときに、社員が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む)はこの限りでない。」と規定されています。この会社の就業規則では解雇事由が就業規則のいろいろな箇所で定められているようです。これでは、社員はどんなとき解雇されるのか不明瞭で不安です。労務担当者も就業規則をいつもまんべんなく読まなければ解雇事由を把握できません。一つの規定で解雇事由の全てがわかるようにする必要があります。 

 解雇事由の内容についても検討不十分と言えます。解雇事由として一般に挙げられるものは以下のようなものがあります。

1 勤務成績不良:無断欠勤が多い、欠勤・遅刻・早退が多い等
2 勤務態度不良:上司に反抗的、注意・業務命令に従わない、同僚と折り合わない・協力しない等
3 能力不足
4 私傷病による労務不能
5 社外非行:そのことにより、職場規律や職場風紀を乱した等の要件が必要

「問題のある事例」をみるとこれらの一般的な解雇事由の一部について列挙されていませんので、現在の事由との関連を考えながら書き加える必要があります。

また、実際の裁判になりますと、就業規則などの解雇事由に該当しているだけでなく、問題行動を指摘して是正するよう注意・指導をしたこと、本人に改善の意欲が認められないことなどを満たすことを求められます。そこでモデル就業規則のように「、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等、就業に適さないと認められたとき」と書き加えておく必要があります。

問題のある就業規則規定
第○条 (解雇)
社員が次の一に該当する場合は解雇する。
(1) 身体又は精神の障害により、職務に耐えられないと認められた場合。
(2) 勤務成績が著しく不良の場合。
(3) 前2号に規定する場合の他、その職に必要な的確性を欠く場合。
(4) 禁固以上の刑に処せられた場合。
(5) 会社の業務上の都合により、真にやむを得ない理由がある場合。

第○条(解雇の制限)
社員が業務上の傷病により、療養のため休業する期間並びに第43条の産前産後休暇の期間及びその後30日間は、解雇しない。ただし、業務上の傷病の場合において、療養開始後3年を経過して傷病が治らないときに、社員が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む)はこの限りでない。
このような規定に変更しないままにしておき、さらに一律同じ金額をガソリン代として毎月定額で支払っているというような状態を続けていると、割増賃金の算定基礎に通勤手当も算入しなくてはならないようなことになりかねません。
というのは、次のような解釈例規があるからです。つまり、割増賃金の算定基礎に算入するか否かは手当の名称ではなく実質で判断するというのです。
家族手当等の意義
家族手当、通勤手当及び規則第21条に掲げる別居手当、子女教育手当は名称の如何にかかわらず実質によって取り扱うこと。(解釈例規 昭22.9.13発基17号)

さらに、次のような解釈例規があり、通勤距離や実際の費用に関係なく一定の金額を支給している場合は、一定の金額の部分については割増賃金の基礎に算入しなければならないとしています。

通勤手当解釈例規
問 一事業場において、実際距離に応じて通勤手当が支給されるが、最低300円は距離に拘わらず支給されるような場合においては実際距離によらない300円は基礎に算入するものと解する。但しこの際事業場が給与の均衡上除外された通勤手当の一部を算入することは妨げないものと解するが如何。
答 本文については見解のとおりである。但し書については家族手当、通勤手当等、割増賃金の基礎より除外しうるものを算入することは使用者の自由である。(解釈例規 昭23.2.20 基発297号)

 以上の解釈を参考にして通勤手当の計算方法が合理的であるかどうか点検してみることをお勧めします。


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プロフィール

角森洋子
特定社会保険労務士・
労働衛生コンサルタント
(元労働基準監督官)

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