神戸元町労務管理サポート 社会保険労務士 角森洋子(元労働基準監督官)による就業規則作成、変更支援

就業規則基礎知識

就業規則の役割   8 減給の限度額
 2 就業規則作成義務と労働者数  9 就業規則と懲戒処分
 3 10人未満の就業規則 10 実態とあった就業規則
 4 事業場の定義  11 個人情報保護法対応
 5 パートにも就業規則   12 わかりやすい就業規則
6 就業規則の記載事項  13 就業規則の不利益変更
 7 法令に抵触しない就業規則  

 就業規則の役割


 (1)  就業規則は労働者の就業上遵守すべき規律を明示する。
   
 (2)  就業規則は労働条件を決定する。
   
 (3)  就業規則は労務管理のマニュアルとなる。

【参考文献】
「就業規則とは労働者の就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称である」
(「労働基準法 下 」労働法コンメンタール3 厚生労働省労働基準局編 平成17年 p848)

「就業規則とは、使用者である各企業の事業場で働く労働者の労働条件を決定し、かつ労働者が遵守しなければならない職場規律を定めた文書です。」
(「就業規則の知識<新版>」02年 外井浩志 日経文庫 p12)
 
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2 就業規則作成義務と労働者数


常時10人以上の労働者を使用する事業場では就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届出なければなりません。(労働基準法第89条)

この場合の「労働者」には、いわゆる正社員のほか、パートタイマーや臨時のアルバイト等すべての者を含みます。

【派遣労働者と就業規則】
労働基準法第89条により就業規則の作成義務を負うのは、派遣中の労働者とそれ以外の労働者とを合わせて常時10人以上の労働者を使用している派遣元の使用者であること。(解釈例規昭61.6.6 基発333号)

3 10人未満の就業規則(簡易就業規則)


 事業場の労働者数が常態として10人未満である場合には、労働基準法上は就業規則を作成する義務はありません。しかし、10人未満の事業場でこそ労働条件や職場で守るべき規律などをめぐる事業主と労働者との間の無用の争いごとを未然に防ぎ、明るい職場づくりに寄与するという就業規則の役割から考えて、就業規則は是非とも作成しておきたいものです。


 事業場の定義


事業場とは会社全体として捉えるのではなく、場所が違うかどうかで判断します。たとえば大阪本社と富山支店は別の二つの事業場ということになります。しかし、出張所等で規模が小さく(どれぐらいの規模かは明確にされていない。)、労務管理についても直近上位の支店あるいは本社等で行っているという場合は場所が違っていても直近上位の支店等に含まれてしまいます。また、場所が同じであっても、事業内容が全く異なっている場合(例えば、電気製品製造工場の隣に同一経営のレストランがある)はそれぞれ独立した事業場とみなされます。

事業とは、「工場、鉱山、事務所、店舗等の如く一定の場所におい相関連する組織のもとに業として継続的に行われる作業の一体をい」う。
「一の事業であるか否かは主として場所的概念によって決定すべきもので、同一場所にあるものは原則として一個の事業とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業とする」。しかし、同一の場所にあっても著しく業務・労務管理が独立した部門(工場内の診療所など)は、独立の事業とされうる。他方、場所的に分散していても著しく小規模で独立性のないもの(出張所など)は、直近上位に機構と一括して一つの事業とされる。(以上は菅野和夫「労働法」 第六版p91,92 弘文堂 平成16年)

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5 パートにも就業規則


 就業規則には、すべての労働者(すなわち正社員だけでなパートタイム労働者や契約社員、嘱託等も含む)の労働条件や服務規律についての定めをすることが必要です。

なお、例えば、パートタイム労働者(以下「パートタイマー」という。のように勤務の態様等から通常の労働者と異なった定めをする必要がある場合には、通常の労働者に適用される就業規則(以下「正社員用就業規則」という。)のほかに、パートタイマー等一部の労働者のみに適用される別個の就業規則(例えば「パートタイマー用就業規則」)を作成することとしても差し支えありません。
パートタイム労働者就業規則

ただし、この場合には正社員用就業規則に、

(1)別個の就業規則の適用を受ける労働者は、正社員用就業規則の適用を除外すること
(2)適用除外した労働者に適用される就業規則は、別に定めることとすることを明記すること

が必要です(以下の規定例を参照)。

規定例 第○条 この就業規則(以下「規則」という。)は、○○会社に勤務する従業員に適用する。
前項の規定にかかわらず、パートタイマーにはこの規則は適用しない。
パートタイマーに適用する就業規則は、別に定めるものとする。

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6 就業規則の記載事項


 就業規則には次の事項などを記載しなければなりません。

絶対的必要記載事項
1〜3の事項はいかなる場合でも就業規則に必す記載しなければならない事項です。

始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては、就業時転換に関する事項
賃金(臨時の賃金等を除く。以下この項において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期並びに昇給に関する事項
退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 

【始業・終業の時刻が勤務態様等により異なる場合】
1 同一事業場において、労働者の勤務態様、職種等によって始業及び終業の時刻が異なる場合は、就業規則に勤務態様、職種等の別毎に始業及び終業の時刻を規定しなければならない。

2 しかしながら、パートタイム労働者等のうち本人の希望により勤務態様、職種等の別ごとに始業及び終業の時刻を画一的に定めないこととする者については、就業規則には、基本となる始業及び終業の時刻を定めるとともに、具体的には個別の労働契約等で定める旨の委任規定を設けることで差し支えない。

なお、個別の労働契約等で具体的に定める場合には、書面により明確にすること。

3 前二項の適用については、休憩時間及び休日についても同様である。(解釈例規 昭63.3.14 基発150号、平11.3.31 基発168号 「労働基準法解釈総覧」 第11版 p555 厚生労働省労働基準局編)

【派遣労働者の場合】
派遣中の労働者について画一的な労務管理を行わない事項については、就業規則にその枠組み及び具体的な労働条件の定め方を規定すれば足りること。

なお、具体的な労働条件の定め方については、労働基準法施行規則第5条第2項に掲げる事項について労働契約締結時に書面の交付により明示する必要があることはもとより、その他の労働条件についても、書面の交付により明示することが望ましいこと。
(解釈例規 昭61.6.6 基発333号 昭63.3.14 基発150号 平11.3.31 基発168号 「労働基準法解釈総覧」 第11版 p555 厚生労働省労働基準局編)

【就業規則の記載事項】
(1) 趣旨
解雇をめぐる紛争を未然に防止する視点から、就業規則の絶対的記載事項である「退職に関する事項」には、「解雇の事由」が含まれることを法律上明らかにしたものであること。
(解釈例規 平15.10.22 基発1022001号 「労働基準法解釈総覧」 第11版 p555 厚生労働省労働基準局編)) 

相対的必要記載事項
4〜11の事項は、定めをおく場合には必ず就業規則に記載しなければならない事項です。

退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
10 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
11 以上のほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

〈例〉
配転・転勤、教育、福利厚生、旅費等

  任意的記載事項:その内容が法令又は労働協約に反しないものであれば任意に記載することができる事項があります。たとえば服務規定。

【必要的記載事項の一部を欠く就業規則の効力】
 労働基準法第89条第1号から第3号までの絶対的記載事項の一部又は同条第3号の2以下の相対的記載事項中、当然当該事業場が適用を受けるべき事項を記載しない終業規則の効力如何。
 設問のような就業規則も、その効力発生についての他の要件を具備する限り有効である。ただし、設問のような就業規則を作成し届出ても使用者の法第89条違反の責任は免れない。
(解釈例規 昭25.2.20 基収278号、平11.3.31 基発168号「労働基準法解釈総覧」 第11版 p554 厚生労働省労働基準局編))

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7 法令に抵触しない就業規則


就業規則の内容は法令に違反していてはいけません。

 就業規則は、その内容が法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはなりません。これらに反する就業規則は、その部分については無効となります。

労働基準法の規定を実施するために必要とされる細目を定めた付属法令

・労働基準法施行規則
・女性労働基準規則
・労働基準法32条1項の労働時間等に係る暫定措置に関する法律
・事業付属寄宿舎規程
・建設業付属寄宿舎規


労働基準法と一体となって労働者の基本的労働条件を定める法令

最低賃金法
労働者災害補償保険法
労働安全衛生法
作業環境測定法
じん肺法
賃金の支払いの確保に関する法律
育児・介護休業法
労働者派遣法
男女雇用機会均等法
パートタイム労働法
労働時間短縮促進臨時措置法
高年齢者雇用安定法

 なお、就業規則において減給の制裁を定める場合には、次のとおり、労働基準法第91条で、減給できる額の限度額が定められていますので、注意が必要です。

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8 減給の限度額


(1)1回の額が平均賃金の1日分の2分の1
(2)(減給に相当する行為が2回以上行われた場合)総額が1賃金支払期における賃金総額の10分の1


9 就業規則と懲戒処分


懲戒処分の種類

譴責、減給、出勤停止、昇給停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇

 懲戒処分は一般社会の刑罰に当たるものなので、罪刑法定主義の考え方が適用されます。つまり、どのような行為が懲戒処分の対象となるのか、そして処分の内容もあらかじめ定めておく必要があるということです。定めておかなければ原則として懲戒処分はできません。


10 就業規則〜実態とあっているか


就業規則の内容は事業場の実態とあったものでなければなりません

 就業規則は、事業場の労働条件や職場で守るべき規律などを定めるものであり、就業規則で定めたことは、労働者と事業主の双方を拘束することになりますので、その内容は実態に合ったものとしなければなりません。

よく他社の就業規則をそのまままねて就業規則としている、あるいはモデル就業規則の空欄に必要な語句や数字を入れただけで使うというものも見受けられますが、そのような方法で就業規則を作成しますと事業場の実態とそぐわないものとなり、就業規則としての機能を果たさないばかりか、かえって労使間のトラブルのもとともなりかねません。

就業規則の作成に当たっては、現在職場で実施している労働時間、賃金等の労働条件あるいは職場規律などについての制度や慣行を整理し、それを基にしながら、改善したい点も含めて内容を検討することが重要です。

また、法律や労働条件等は時とともに変わっていきますから、就業規則を作成した後にも、必要に応じて見直しを行い、常に実態に合ったものとしていかなければなりません。

なお、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則に定めた事項に変更があった場合には、それに合わせて就業規則を変更し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないこととされていますので、注意が必要です。・・・労働基準法第89条

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11 個人情報保護法対応


個人情報保護法に対応していますか

 個人情報保護法(平成17年4月1日全面施行)を遵守するためには、情報の漏洩をもたらす事のないように配慮して就労するよう、従業員の理解と協力を得る必要があります。就業規則には少なくとも以下の項目を記載しておかなければなりません。

1 服務規律
(1) 在職中、退職後における個人情報漏洩を行わないことに対しての心構えを確認すること。
(2) 会社内において会社の電子機器を私的に利用して外部に電子メールを送る、インターネットを利用する等を行わないことについて確認すること

2 制裁規定の整備個人情報保護の社内ルールを確立するとともに、それらのルールが守られなかった場合の制裁規定も整備しておかなければなりません。

(1) 業務に関係のないを目的でインターネットを頻繁に利用したとき。外部に電子メールを送ったとき。

(2) 社内の秘密情報(個人情報を含む)を無断で持ち出したとき、または持ち出そうとしたとき。

<参考>

雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針

雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項


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12 わかりやすい就業規則


就業規則の内容は、わかりやすく明確なものとしなければなりません。

 就業規則の内容が複雑でわかりにくかったり、また逆に抽象的なものである場合には、その解釈をめぐって労使間のトラブルが生じることがあります。
就業規則の内容は、誰でもが理解できるように、わかりやすく明確なものとしなければなりません。

13 就業規則の不利益変更


労働者に不利益となる変更は一方的にはできない。 使用者が一方的に新たな就業規則の作成、または変更をして、労働者に不利益な労働条件をかすることは、原則として許されません。
(労働契約法第9条)

しかし、その変更あるいは制定の内容が合理的なものであるかぎり、個々の労働者の同意を得なくても就業規則の作成、変更は可能とされています。(労働契約法第10条)

最高裁によれば、「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない」としています。

何が合理的であるか〜就業規則の変更

就業規則は合理的な理由があれば変更できる。

何が合理的であるか。
平成9年2月28日の最高裁判決(第四銀行事件)は、
(1) 変更によって労働者が被る不利益の程度
(2) 使用者側の変更の必要性の内容、程度
(3) 変更後の就業規則の内容自体の相当性
(4) 代替措置その他関連する他の労働条件の改善状況
(5) 労働者代表(労働組合)とどのような話し合いをしたか

十分な説明を求める。

変更の提案があった場合は、変更の必要性について十分な説明を求めるといいでしょう。

就業規則の不利益変更の必要性について、労働組合又は労働者代表に対して説明をしてもらいます。

同意できない場合は、賃金の減少幅を圧縮するなど会社側と話し合いを持つことが必要となります。

神戸元町労務管理サポート
(旧かくもり労務管理事務所)

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TEL 078-599-5018
FAX 078-599-5019

Mail y.kakumori@nifty.com

プロフィール

角森洋子
特定社会保険労務士・
労働衛生コンサルタント
(元労働基準監督官)

詳しくはコチラ

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