神戸元町労務管理サポート 社会保険労務士 角森洋子(元労働基準監督官)による就業規則作成、変更支援

就業規則とその問題点 2

目 次

6 休職と退職、解雇
7 退職
8 解雇事由

9 賃金規程、通勤手当と割増賃金

6 休職と退職、解雇

就業規則規定例 1

第○条(休職)
社員が次の各号の一に該当するときは、休職を命ずる。
(1) 業務外の傷病による欠勤が引き続き3ヶ月を超えたとき。

以下略


第○条(復職)
休職期間中に休職事由が消滅したときは、元の職務に復職させる。なお、元の職務に復職させることが困難であるか、又は不適当な場合には、異なる職務に就かせることがある。

2 略

第○条(解雇)
社員が、次の各号の一に該当するときは解雇する。

(4) 第○条に定める休職期間が満了し、休職事由が消滅しないとき。


 就業規則規定例2
(休職)
第9条
1 従業員が、次の場合に該当するときは、所定の期間休職とする。
@ 私傷病による欠勤が○か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないと認められたとき    ○年以内
A 前号のほか、特別の事情があり休職させることが適当と認められるとき
必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、元の職場に復帰させる。ただし、元の職場に復帰させることが困難であるか、または不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治ゆせず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。


労働者が私傷病(業務外)により就労できない場合、
民法の契約原則では、労働契約の目的を達成できず契約を継続しがたいものとして、使用者は、契約解除ができます(普通解雇)。

 しかし、終身雇用を前提にしてきたわが国の企業では、病気休職制度を設けることが一般的です。休職制度は、法律上の制度ではなく、就業規則や労働協約によって認められた制度です。

 これは、所定の休職期間内に復職できれば解雇を猶予するが、休職期間満了までに復職できなければ解雇あるいは自動的に労働契約が終了するという制度です。

一般に休職期間中は健康保険の傷病手当金(標準報酬月額の6割・1年6か月)や共済組合から給付金が支給されています。

簡単に解雇することはできない

 休職期間終了後に元の職場に復帰する権利は、当然に認められているわけではありません。医師の診断により労働者の状況(身体の障害の程度等)が、業務にたえられるかどうか、元の職場に復帰することや配置転換をするの可能性があるかどうかは会社が判断するものです。
  元の職場に復帰することや配置転換をするの可能性があるにもかかわらず、それを無視し解雇した場合は、その解雇は無効になります。
  休職期間満了後の解雇も基本的には同様です。  

 従来の労務を十分に遂行することができない場合でも、提供可能な労務分野があり、かつその提供を申し出ており、配属部署でのやりくりができる場合は、使用者は労働者の就労を認めなければらないとされています(片山組事件 東京高裁 平成7.3.16、最高裁第一小法廷 平成10.4.9 労判736号15ページ、差戻審 東京高裁 平成11.4.27、差戻審上告審 最高裁 平成12.6.27)。

  一旦復職させて後に解雇するというケースでも、同様です。(全日本空輸事件 大阪高判平成13.3.14 労判809号61ページ)

  現在のモデル就業規則等を見ますと規定例2が一般的なようです。規定例2の方が実務上は扱いがしやすいように思われます。

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7 退職

  労働者の意思による退職には、自己退職合意退職があります。どちらの場合も、退職の意思表示をするには、必ずしも書面による必要はありませんが、書面によるのが普通です。

自己退職の場合は、退職の意思表示が使用者に到達すれば、一定期間(下記民法参照)が経過することで退職の効果が生じます。使用者の同意や承諾は必要ありません。この場合、退職届を撤回することはできません。
雇用期間の定めのない場合は、退職申し入れをしてから2週間で退職ということになります。その2週間は、出勤して業務の引き継ぎなどをすることになります。一方、雇用期間の定めのある場合は、期間の途中で退職することは原則としてできません。ただし、就業規則などでこれとは別の取り決めをすれば、そちらが優先します。

民法627条

当事者が雇傭の期間を定めざりしときは各当事者は何時にても解約の申入 を為すことを得此場合に於ては雇傭は解約申入の後2週間を経過したる 因りて終了す 

2 期間を以て報酬を定めたる場合に於ては解約の申入は次期以後に対して之を為すことを得但其申入は当期の前半に於て之を為すことを要す

3 6か月以上の期間を以て報酬を定めたる場合に於ては前項の申入は3か月前に之を為すことを要す

 合意退職の場合は、退職の意思表示によって労働者が合意解約を申込み、使用者の受理があってはじめて退職の効果が生じます。これは、退職届を提出することで合意解約を申込み、使用者が受理(同意・承諾)することで退職の効果が生じます。使用者による受理が未だないという状態(上司に提出したが、上司が保管している場合など)は、合意解約の申込みがなされただけですので、退職の効果は生じません。この段階では、撤回も可能です。
  なお、使用者の受理(同意・承諾)は、通常、退職辞令の交付により行われます。

問題のある就業規則規定
(依願退職)
第○○条 職員が退職しようとする場合は、少なくとも14日前まで退職願を提出し、任命権者の承認を得なければならない。


  この例では、合意退職と自己退職の区別がついていないということになります。そこで次にモデル規定を示します。

就業規則規定例
第○○条(退職)
1 前条に定めるもののほか従業員がつぎのいずれかに該当するときは、退職とする。
(1)退職を願い出て会社から承認されたとき、または退職願を提出して14日を経過したとき

  この場合は「退職を願い出て会社から承認されたとき」が合意退職であり、「退職願を提出して14日を経過したとき」が自己退職ということになります。後半の自己退職については承認は必要ないということが表現されています。

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8 解雇事由

 解雇の事由は労働基準法第89条により就業規則の絶対的必要記載事項になっています。平成15年の労基法改正により、絶対的必要記載事項「退職に関する事項」に「解雇の事由を含む」と明記されました。
  そこで下記「問題のある規定例」にもみられるように解雇事由について列挙する必要があります。現在のところ就業規則に記載された解雇事由は限定列挙といって、定められた解雇事由でしか解雇できないとされていますので、規定内容については慎重に検討し、さらに最後に「その他前各号に準ずるやむを得ない事情があったとき」のように一般条項を記載しておく必要があります。この規定をおくことによって限定的に列挙された解雇事由に相当するような事実についても解雇で対応することができることになります。

「問題のある事例」については(3)が一般条項にあたると考えられますが、1,2号の解雇事由に準ずるとしか書かれていませんので、一般条項としては極めて不十分です。せっかく一般条項を置くのですから、やはり各号の最後において、列挙された具体的な解雇事由を全て受けて「その他前各号に準する」としたほうが安全であると言えるでしょう。

実は解雇事由としては、下記に示すようにこれら以外に別の規定(解雇制限)の中でも「療養開始後3年を経過して傷病が治らないときに、社員が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む)はこの限りでない。」と規定されています。この会社の就業規則では解雇事由が就業規則のいろいろな箇所で定められているようです。これでは、社員はどんなとき解雇されるのか不明瞭で不安です。労務担当者も就業規則をいつもまんべんなく読まなければ解雇事由を把握できません。一つの規定で解雇事由の全てがわかるようにする必要があります。 

 解雇事由の内容についても検討不十分と言えます。解雇事由として一般に挙げられるものは以下のようなものがあります。

1 勤務成績不良:無断欠勤が多い、欠勤・遅刻・早退が多い等
2 勤務態度不良:上司に反抗的、注意・業務命令に従わない、同僚と折り合わない・協力しない等
3 能力不足
4 私傷病による労務不能
5 社外非行:そのことにより、職場規律や職場風紀を乱した等の要件が必要

  「問題のある事例」をみるとこれらの一般的な解雇事由の一部について列挙されていませんので、現在の事由との関連を考えながら書き加える必要があります。

また、実際の裁判になりますと、就業規則などの解雇事由に該当しているだけでなく、問題行動を指摘して是正するよう注意・指導をしたこと、本人に改善の意欲が認められないことなどを満たすことを求められます。そこでモデル就業規則のように「、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等、就業に適さないと認められたとき」と書き加えておく必要があります。

問題のある就業規則規定
第○条 (解雇)
社員が次の一に該当する場合は解雇する。
(1) 身体又は精神の障害により、職務に耐えられないと認められた場合。
(2) 勤務成績が著しく不良の場合。
(3) 前2号に規定する場合の他、その職に必要な的確性を欠く場合。
(4) 禁固以上の刑に処せられた場合。
(5) 会社の業務上の都合により、真にやむを得ない理由がある場合。

第○条(解雇の制限)
社員が業務上の傷病により、療養のため休業する期間並びに第43条の産前産後休暇の期間及びその後30日間は、解雇しない。ただし、業務上の傷病の場合において、療養開始後3年を経過して傷病が治らないときに、社員が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む)はこの限りでない。

  

就業規則規定例
第○条 (普通解雇)
1 従業員が次のいずれかに該当するときは、解雇することができる。
(1) 勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等、就業に適さないと認められたtき

(2) 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たしえないと認められたとき

(3) (4) (5) (6) (7) (8)  略

(9) その他前各号に準ずるやむを得ない事情があったとき

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9 賃金規程、通勤手当と割増賃金

かつては電車やバスを通勤手段とするのが一般的であり、通勤手当も定期代としてのみ規定され、そのように支払われていました。 

通勤手当は、通勤距離が○km以上の者に対して月額○円までの範囲において、公共交通機関の1ヶ月定期代に相当する額を支給する。

 ところが車社会となってからは、通勤手段もマイカーを使うことが一般的になってきています。とりわけ地方では電車やバスよりも車による通勤が多いというような状態となっています。
さて、割増賃金の算定基礎に通勤手当は算入しなくてよいことになっています。 労働基準法第37条第4項によれば、割増賃金の算定基礎から除外できる賃金は(1)家族手当、(2)通勤手当、(3)その他命令で定める賃金(以上限定列挙)とされています。
(3)のその他命令で定める賃金というのは、労働基準法施行規則第21条により、以下のように定められています。
  1 別居手当 2 子女教育手当、3 住宅手当 4 臨時に支払われた賃金、5 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(以上限定列挙)
 
  マイカーで通勤する労働者に対して通勤手当を支払うように制度を変更したときに、下記規定例のように合理的に金額を定め、賃金規程を変更していれば何等問題はありません。労働者の通勤距離や、通勤に実際に必要な費用に応じて算定される手当であれば、割増賃金の算定基礎から除外できる「通勤手当」となります。

就業規則、通勤手当規定例
第○条 通勤手当
1 通勤手当は、通勤距離が○km以上の者に対して月額○○○○円までの範囲において、通勤に要する実費に相当する額を支給する。
公共交通機関 当該交通機関の1ヶ月定期代
自動車(二輪を含む。以下同じ。)
 通勤距離 片道2km〜○km未満 月額 ○○○○円
 通勤距離 片道○km〜○km未満 月額 ○○○○円
 通勤距離 片道○km〜○km未満 月額 ○○○○円
2 公共交通機関と自動車の両方を使用する場合は、それぞれの合計額を支給する。


  このような規定に変更しないままにしておき、さらに一律同じ金額をガソリン代として毎月定額で支払っているというような状態を続けていると、割増賃金の算定基礎に通勤手当も算入しなくてはならないようなことになりかねません。
  というのは、次のような 解釈例規があるからです。つまり、割増賃金の算定基礎に算入するか否かは手当の名称ではなく実質で判断するというのです。

家族手当等の意義
家族手当、通勤手当及び規則第21条に掲げる別居手当、子女教育手当は名称の如何にかかわらず実質によって取り扱うこと。(解釈例規 昭22.9.13発基17号)

さらに、次のような解釈例規があり、通勤距離や実際の費用に関係なく一定の金額を支給している場合は、一定の金額の部分については割増賃金の基礎に算入しなければならないとしています。

通勤手当解釈例規
問 一事業場において、実際距離に応じて通勤手当が支給されるが、最低300円は距離に拘わらず支給されるような場合においては実際距離によらない300円は基礎に算入するものと解する。但しこの際事業場が給与の均衡上除外された通勤手当の一部を算入することは妨げないものと解するが如何。
答 本文については見解のとおりである。但し書については家族手当、通勤手当等、割増賃金の基礎より除外しうるものを算入することは使用者の自由である。(解釈例規 昭23.2.20 基発297号)

 以上の解釈を参考にして通勤手当の計算方法が合理的であるかどうか点検してみることをお勧めします。

神戸元町労務管理サポート
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プロフィール

角森洋子
特定社会保険労務士・
労働衛生コンサルタント
(元労働基準監督官)

詳しくはコチラ

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