神戸元町労務管理サポート 社会保険労務士 角森洋子(元労働基準監督官)による就業規則作成、変更支援

労働相談Q&A 賃金

Q1 休業手当
建設会社で土木工事に30年従事している。最近、平均すると月に15日ぐらいしか出勤できない状態が続いている。理由は仕事がないということで有給休暇でも何でも使えとも言われている。会社が休めと言った場合の補償は無いのか。

 

A 労働基準法第26条では
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」
と休業手当について定めています。

質問の場合は、土木工事の工事量が減少しているために仕事がない日があり、会社から出勤に及ばずという指示がある日が1ヶ月に10日近くあるということです。質問者は毎日働く意思があるのにもかかわらず、会社の都合で休めと言われているのですから、労働基準法第26条で規定されている休業手当を会社は支払う義務があります。事業主が制度を知らないということも考えられるので、今までの休業分をまとめて請求してみるといいでしょう。年次有給休暇でも何でも使えと言っているのですから、お金がないわけではないと思われるので法制度を説明すれば休業手当を支払うだろうと思います。あるいは年次有給休暇が相当日数あるのなら、会社が言うようにこの際その権利を行使することも考えられるでしょう。

 請求しても休業手当を支払わない場合は、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に申告する(労働基準法第104条)とよいでしょう。

使用者の責に帰すべき事由」とは

(1) 民法536条第2項にいう「債権者の責に帰すべき事由」(故意、過失または信義則上これと同視すべき事由)よりも広いが、しかし 
(2) 不可抗力によるものは含まないとされています。

民法第536条(債務者の危険負担等)
第2項 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

雇用関係においては、債権者は使用者、債務者は労働者とします。反対給付とは賃金です。

不可抗力にあたるか否かの判断

1 その原因が事業の外部より発生した事故であること、
2 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお避けることのできない事故であること、
 
   の二要件を備える必要があります。

派遣労働者の場合、使用者の責に帰すべき事由があるかどうかの判断は、派遣元の使用者についてなされる
解釈例規【派遣労働者の休業手当支払の要否
派遣中の労働者の休業手当について、 労働基準法第26条の使用者の責に帰すべき事由があるかどうかの判断は、派遣元の使用者についてなされる。したがって、派遣先の事業場が、天変地変等の不可抗力によって操業できないために、派遣されている労働者を当該派遣先の事業場で就業させることができない場合であっても、それが使用者の責に帰すべき事由に該当しないこととは必ずしもいえず、派遣元の使用者について当該労働者を他の事業場に派遣する可能性等を含めて判断し、その責に帰すべき事由に該当しないかどうかを判断することになること。(昭61.6.6 基発333号「労働基準法解釈総覧」 厚労省労働基準局編  平16 労働調査会)

休業の事由とは
故意、過失による休業
機械の検査
原材料の不足
流通機構の不円滑による資材の入手困難
監督官庁の勧告による操業停止
親会社の経営難による資金・資材の獲得困難  
新規学卒採用内定者に対して自宅待機を命じた場合    
ストライキによる休業                     等

解釈例規【下請け工場の資材、資金難による休業】
 親会社からのみ資材資金の供給をうけて事業を営む下請企業において、現下の経済情勢から親会社自体が経営難のため資材資金の獲得に支障を来し、下請工場が所要の供給をうけることできずしかも他よりの獲得もできないため休業した場合、その事由は、 法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」とならないものと解してよいか。
 質疑の場合は使用者の責に帰すべき休業に該当する。(昭23.6.11 基収1998号)。

休業」とは、
労働者が働く意思があるのに、会社の業務上の都合により就業できない場合などをいいます。

一斉休業であろうと、個々の労働者に対して、働く意思があるにもかかわらず、就業を拒否するような場合も含まれます。休業は1日の休業である必要はなく、1日の所定労働時間の一部を休業した場合も含みます。

休業中の賃金はどうなるか

民法第536条第2項は、使用者の責に帰すべき事由によって労働者が就業できなくなった場合は、反対給付である賃金を受ける権利があると、規定していますが、この民法の規定は、労使間の特約で排除することも可能であり、また実際に全額を支払わせるためには最終的には民事訴訟によらなければならないことになるので、労働者の保護に十分であるとはいえません。

そこで、労働基準法第26条は「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と規定し強行法規をもって労働者の平均賃金の100分の60以上を保障しています。

一部時間の休業の場合は

例えば、1日の労働時間のうちの一部(例えば半日の4時間)を休業した場合は休業手当はどうなるのでしょうか。

現実に働いた時間(4時間)に対して支払われる賃金が、平均賃金の6割より少ないときは、その差額を休業手当として支払わなければなりません。

平均賃金の6割より多いときは休業手当を支払う必要はありません。

解釈例規【休業期間が1労働日に満たない場合の休業手当の額】
 
一  ・・・所定労働時間が4時間である土曜日に休業を命じられた場合の休業手当は
(イ) 平均賃金の6割に相当する額とすべきか。
(ロ) 平均賃金の8分の4の6割に相当する額とすべきか。

二  所定労働時間が8時間である日にその日の前半を休業せしめられた場合この休業せしめられた時間に対し、休業手当を支給すべきであるか。・・・
 
一 労働基準法第26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、その休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならないと規定しており、従って一週の中ある日の所定労働時間がたまたま短く定められていても、その日の休業手当は平均賃金の100分の60に相当する額を支払わなければならない」
二  1日に所定労働時間の一部のみ使用者の責に帰すべき事由による休業がなされた場合にも、その日について平均賃金の100分の60に相当する額を支払わなければならないから、現実の就労に対して支払われる賃金がこの休業せしめられた平均賃金の100分の60に相当する金額に満たない場合には、その差額を支払わなければならない。(昭27.8.7 基収3445号「労働基準法解釈総覧」 厚労省労働基準局編  平16 労働調査会)

休業手当額の未払について裁判に訴える場合は、その額と同額の付加金の請求も可能です(労基法第114条)。
また、付加金について、判決確定の日の翌日から、民事法定利率である年5%の遅延損害金を請求できます。

雇用調整助成金

業種を問わず、個々の事業主が経済上の理由により急激な事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が対象となる助成金

会社は要件によっては、雇用調整助成金を受けることができます。ハローワークで使用者が助成金を受けられるか、あるいは受けているかどうか確認しましょう。

 

 

東日本大震災に伴う労働基準法等に関するQ&A(第3版)

Q2 銀行振込み

給与は銀行振込になっている。振込先銀行はA銀行一行となっている。従業員はB銀行を希望しているが、会社としてはA銀行しか認められないと回答したところ、従業員は手数料を負担してもB銀行にしてほしいという。B銀行振り込みを認めて手数料を差し引いてもいいか。

A 結論からいいますと、B銀行も認めなければならないし、手数料を従業員から取ることもやってはいけません。また、その手数料ですが、特に具体的な定めはありませんが、労働者から取るということは認められません。賃金の支払に関する費用は使用者が負担するべきものです。

労働基準法第24条では、

賃金は、通貨で支払わなくてはならないと定めています。これは現物給与を禁止する趣旨ですが、銀行振込みも通貨払いではありません。

今では、銀行振込みが認められていますが、要件が決められています。

使用者は、労働者の同意を得た場合には賃金の支払についてその労働者の指定する銀行その他の金融機関の預金又は貯金への振込みができるとされています。(労働基準法施行規則第7条の2第1項)さらに証券総合口座への賃金の振込みも認められるようになっています。(労働基準法施行規則第7条の2第2項)

この同意については形式を問いません。
振込みについては、賃金の全額が賃金支払日に払いだせるようにしておかなければならないとされています。

【賃金の預金又は貯金への振込みによる支払】
労働基準法施行規則第7条の2第1項における「同意」については、労働者の意思に基づくものである限り、その形式は問わないものであり、「指定」とは、労働者が賃金の振込み対象として銀行その他の金融機関に対する当該労働者本人名義の預貯金口座を指定するという意味であって、この指定が行われれば同項の同意が特段の事情がない限り得られているものであること。
また、「振込み」とは、振り込まれた賃金の全額が所定の賃金支払日に払い出し得るように行われることを要するものであること。
解釈例規(昭63.1.1 基発1号「労働基準法解釈総覧」 厚労省労働基準局編  平16 労働調査会))

振込み手数料について労使どちらが負担するかについては、労基法で特に定めはありません。口座振込み制度の目的は、会社の賃金支払事務負担の軽減と危険負担の回避ですから、会社が負担するのが妥当です。
<参考>
民法第485条
弁済の費用に付き別段の意思表示なきときは其費用は債務者之を負担す」
神戸元町労務管理サポート
(旧かくもり労務管理事務所)

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プロフィール

角森洋子
特定社会保険労務士・
労働衛生コンサルタント
(元労働基準監督官)

詳しくはコチラ

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